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最高裁判所第一小法廷 昭和30年(あ)3628号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人五井節蔵の上告趣意第一点及び第二点は違憲をいうがその実質は単なる訴訟法違反の主張に帰し、〔公判の審理において証拠調終了後、検察官に対し事実及び法律の適用について意見を陳述する機会を与えさえすれば、たとえ検察官が何等意見を述べなくても、訴訟手続の違法を来すべきものでないと解すべきことは当裁判所の判例とするところであって(昭和二九年六月二四日第一小法廷決定、判例集八巻六号九七七頁参照)反対の見地に立つ第一点の所論は賛同し得ない。また第二点所論の証拠物件が論旨の指摘するように小泉ヨシ子に対する別件で差押えられたものを被告人に対する本件で証拠として提出されたものであるとしても、この一事は異議なく証拠調のなされたことが認められる以上、これを事実認定の資料とすることを妨げるものでないとした原判旨は首肯することができる。〕同第三点は違憲をいうが事実誤認を前提とするものであり(原審は所論没収物件が被告人以外の者に属することを確認し得べき証拠は存しないと判示しているのであって、この点に関する原判示は肯認するに足る。)同第四点も違憲をいうけれどその実質は単なる訴訟法違反の主張に帰し、(第一審判決が所論の物件を判示犯罪行為の組成物件として刑法一九条一項に基き没収したものであることは、その判文上窺い知ることができるから第一審判決には理由不備の違法はないとした原判旨は首肯できる。)同第五点も違憲をいうがその実質は量刑不当の主張に帰着する。なお被告人本人の上告趣意は事実誤認、量刑不当の主張を出でないものである。それ故論旨はすべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって同四一四条三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩松三郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎)

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